四、変化の流れ
二、シンクロニシティ
シンクロニシティとは、カール・グスタフ・ユング(1875~1961)というスイスの心理学者が語った言葉ですが、「意味のある偶然」と広く呼ばれています。それは、「共時性原理」とも呼ばれ、「この世の中には、我々の科学で使われている因果律とは別の世界(非因果律世界)が存在していて、ある事柄が、もう一つの別の世界と共鳴することによって、類似した出来事が発生してくる」というものです。
シンクロニシティの例を示すユングの興味深い話があります。
ある時、ユングの所に、ある若い女性患者が来ました。ユングは、窓を背にしてその女性の話を聞いていました。すると、その女性は、「昨夜、私が誰かに、黄金のスカラベ(新聖甲虫)を贈る夢を見たのです」と夢の話をしていると、まさにその時、何かが窓を叩く音が聞こえたのです。ユングは振り返ってみると、ちょうど大きな昆虫が窓ガラスにぶつかり、部屋の中へ入ろうとしているところでした。ユングは、すぐに窓を開け、中に飛び込んできた昆虫を空中で捕えたのです。それはバカラコガネムシで、金色のスカラベに最も近いものでした。
「これがあなたのスカラベです」
ユングはそう言って、それを女性患者に渡したのです。
シンクロニシティには、次のようなものがあります。
自分または他の人が、心の中で想ったことが現実に実際に起きてしまうこと。
夢またはビジョンが、実際に出来事として起きてしまうこと。
自分が、あることについて考えている時に、そのこと自体や、それに関連した事柄が、急に自分の目の前に飛び込んで来る場合が時々あります。そういう時、私達は、あまりにもタイムリーな出来事に、驚きを隠すことはできません。そして、私達は、その偶然を、自分の力を超えた、大きなものから来たメッセージと捉えるのです。
東洋に、「弟子に心の準備ができた時に、師匠が現われる」という諺があります。それは、総てのものが一つに繋がっていて、その人の最適な時に、最適な出来事が起きてくるということを示しています。また、宇宙は総てを知っていて、その人が一番必要な時に、その人にとって一番必要なものを提供してくれるということを表しています。
時間的に見れば、まさにその時に、その出来事が同時発生することが、シンクロニシティとしては一番分かりやすいことです。しかし、シンクロニシティは、少し時間が経ってから起きてくることもあるのです。なぜならば、シンクロシティとは、その人にとって、最も必要なものが、最適な時に起きてくることだからです。
なぜ共時性が起きるのかという根本的理由は、総ての生命体は、目に見えない大生命という一つの世界の中に包まれて存在しているということが挙げられます。ですから、あらゆることは、どんなに小さなことでも、総ての生命世界と常に繋がりながら、相互に影響し合い、協力し合い、調和しているということを示しているのです。
そのような生命の総合的関連性の中で、自分の身に起きてくる出来事には、必ず意味が含まれています。そして、その生命界からの反応というものは、今後、私達が進むべき未来の方向性を示唆してくれるものとなるのです。そのように、私達はシンクロニシティを経験することによって、その方向性でよいのか、悪いのかという一つの宇宙的判断を与えられることにもなるのです。そのように、シンクロニシティとは、古代より、総ての吉凶を判断する占いの源になっているものです。
次の出来事は、私に起きたシンクロニシティです。
私が高校生の時、レコードを聞く為に、大きなステレオが欲しいと思ったのです。すると、その日、兄が、「友人の引越しを手伝うので一緒に来ないか」と私に言ったのです。そして私は、その日、兄の友人の引越しを手伝うことになったのです。すると、引っ越し終了後、兄の友人は、「このステレオ、要らないから、持っていっていいよ」と私に言ったのです。その結果、私は、たった一日で、自分の願望が実現してしまうことになったのです。私は、ふと心の中で想ったことが、たった一日で実現してしまったことに対して、非常に驚いてしまったことを今でも覚えています。
次の体験も信じられないようなシンクロニシティでした。
この体験は、私が、インドの有名な人の本を読み終わった時のことです。私は、瞑想教室へ行ってみたくなり、いくつか瞑想センターを探した後で、ある教室を選びました。そして、ある日の午前中に、私は、そのセンターへ電話をかけたのです。電話には、外国人が出て、丁寧な日本語で、センターの内容と特徴を私に伝えてくれました。私は、すぐにそこへ行こうとは思わずに、少し読みたい本があったので、新宿のある書店へ行くことにしたのです。そして、その日の午後、私はその書店で、その本を探し、見つけることができました。すると、私の隣に、一人の外国人がいたのです。その外国人は、私と同じように、その本を見ていたのです。そして、お互いの目が合って、何となく話したくなりました。すると、その外国人は、「この本は、私の友人が書いたものです」と語りかけてきたのです。その時、私は、その外国人に、あまり多くの話をした記憶はないのですが、その外国人は、
「あなたは、今日、私と電話で話をしました」
いきなり、私に、そう言ったのです。
その後、話をすることによって、その外国人が、少し前に私が電話で話した人であることが分かりました。そして、その外国人と共に、彼の瞑想センターへ行くことができたことは言うまでもありません。
たぶん、その外国人は、電話で話した時の私の声や、話し方などを覚えていたのだと思いますが、このような偶然の一致というものが実際にあることを経験して、本当に驚いたのです。
小さなシンクロニシティは、身の周りに頻繁に起きています。ですから、一日に起きる偶然の一致をノートに書いていくと、それが相当な数になるはずです。また、それがどういう意味であるのかを、考えながら生きていくことも楽しい人生を過ごす趣味の一つになるかもしれません。
どんな話でも、どんな電話でも、どんな占いでも、どんな出逢いでも、どんな出来事でも、必ず、そこには何かの意図が隠されているはずです。そのシンクロニシティの意味をよく考えて、あまり良いことが続かない場合は、自分の心を反省して、その方向性を修正していく必要が出てきます。良いシンクロニシティが起きた場合は、そのままの状態で進んで良い事を示しています。そのように、共時性という原理を体験していくことによって、自分という存在と、自分の使命というものを理解することができるようになっていくのです。

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